重力レンズ(Gravitational lens,じゅうりょく-)とは、恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力によって曲げられたり、その結果として複数の経路を通過する光が集まるために明るく見えたりする現象。光源と重力源との位置関係によっては、複数の像が見えたり、弓状に変形した像が見えたりする。重力レンズ効果とも言われる。また、リング状の像のものはアインシュタインリングと言われる。
光が曲がることは一般相対性理論から導かれる現象で、一般相対性理論の正当性を証明した現象のひとつである。光は重力にひきつけられて曲がるわけではなく、重い物体によってゆがめられた時空を進むために曲がる。対象物と観測者の間に大きい重力源があると、この現象により光が曲がり、観測者に複数の経路を通った光が到達することがある。これにより、同一の対象物が複数の像となって見える。光が曲がる状態が光学レンズによる光の屈折と似ているため重力レンズと言われる。
右はその効果を示したCGである。1つの銀河から発せられた光(白い矢印)が、中央にある重い天体の影響によって曲げられ、それぞれ別の経路で地球へと届く。地球上の観測者からは、あたかも2つの同じ天体があるように見える。オレンジ色の矢印は見かけの光の経路である。
なお、複数の像はそれぞれ別々の経路を通ってきた光であるため、一般的に観測者(地球)までの到達時間が異なる。そのため、それぞれの像の光が対象物からでたのは異なる時である。
分類 [編集]
3つの種類に分類される。
強い重力レンズ(Strong lensing): レンズ源の影響が強く、アインシュタイン・リング、弓状に変形した像(arc)、複数の像など、光の曲げられる現象が明らかに観測されるもの。
弱い重力レンズ(Weak lensing): レンズ源の影響が比較的弱く、多くの天体の光線データを集計することによって、統計的にレンズ効果と判定される現象。宇宙初期の背景マイクロ波が地球に届くまでに銀河形成によって揺らぐ統計などの研究がなされている。
マイクロレンズ(Microlensing): 非常に小さいレンズ源のため、光の曲がりではなく、光の明るさの時間変化によってレンズ現象だと推定される現象。銀河内のダークハローを形成する小天体が、地球から遠方の天体との視線方向を横切るときなどに発生する例が知られている。
歴史 [編集]
重力レンズ効果は、1936年にアルベルト・アインシュタインが対象物、重力源、観測者が一直線上にならんだ場合にはリング状の像が見えると発表したことにより有名になった。このことから、リング状に見えるものをアインシュタインリングと言う。位置関係が一直線上からズレたり、重力源が無視できない大きさを持つと、それらの程度により弓状の像やゆがんだ複数の像が見える。弓状の像のものがアインシュタインリングと言われることも多い。
当初は、発生する可能性が低いため観測は不可能ではないかと考えられていた。しかし、1979年の3月に隣接するクエーサー像のスペクトルがまったく同じであることが発見され、8ヶ月後には、これが銀河を重力源とする重力レンズによるものであることが分った。以降多くの例が発見され、2005年現在で約100の重力レンズによる多重像クェーサー系が報告されている。
重力レンズの観測およびそれを利用した研究 [編集]
測定に近似を必要とするX線観測による質量測定と異なり、重力源の質量を直接光学的観測により測定することができる点が特筆すべき特徴である。
銀河による重力レンズ効果を観測することで、銀河自体の質量を測定することが可能である。この結果とX線測定によって見積られた質量を比較すると、明らかに差がある。これは銀河に分布するダークマターによる質量が寄与しているためと考えられ、すなわち重力レンズはダークマターの質量測定に用いることができる。つまりダークマターの解明に用いることができる現象であると言える。
2003年12月18日に東京大学などの研究グループがそれまで知られていた重力レンズよりも2倍以上光が曲がる変化を発見した。
また、重力マイクロレンズを利用した太陽系外惑星の探索をPLAN、OGLE、MOAなどのチームが行っている。
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